31(Thirty-one) Factory 北原 サエのブログ

文芸作品を創っています。

2020-01-01から1年間の記事一覧

  五「クリスマスの思い出」

子供の頃、クリスマスにツリーを飾った。卓袱台のある畳の居間に、高さ五十センチくらいの綿の雪を被った緑色のツリーがあった。ツリーには、三角屋根の小さな家の形をした飾りがいくつもついていた。それぞれの家には、赤や緑のセロファンで作ったような窓…

  四「昭和の食卓」

昭和の食卓にあったもの。味の素、パンケース、バターケース。プラスチックの青い蓋の四角いパンケースに食パンが入っていた。バターも四角いのをそのままプラスチックのバタ―ケースに入れていた。オーブントースターなどなく、トースターの原型の二枚ずつ焼…

  三「昭和の暮らし」

昭和の畳の居間には卓袱台があって、箱型のモノクロテレビがあった。テレビの傍にはいつも、見たい番組を丸で囲った新聞の番組表があった。 明治生まれの祖母は、テレビで相撲を見るのが好きだった。ひいきの力士が勝つと、パチパチと手を叩いて喜んでいた。…

二「焼き芋売り」

昭和の寒い冬の夜、炬燵に入っていると、「焼きいも―、石焼きーいもー」という焼き芋売りの声が聞こえてくる。私は母にお金をもらい、家族の人数分の焼き芋を買いに行く。 車なんかじゃない、リヤカーだった。荷台に黒い小石がぎっしりあって、その中で芋が…

エッセー 昭和ノスタルジー 一「ウェスタンカーニバル」

いまは近代的なビルが建つ有楽町の一角に、かつて日劇という建物があり、ウェスタンカーニバルが開催されていた。 母と一緒にウェスタンカーニバルを見に行った記憶がある。ステージにいたのは、真家ひろみ、飯野おさみ、中谷良、あおい輝彦。元祖ジャニーズ…

短歌連作「昭和ノスタルジー」五十首

屋上の空は青くて空いていて、いくつもあった赤いアドバルーン 豆腐売る自転車通る夕焼けの街の通りにラッパ聞こえて リヤカーで石焼芋を売る声を聞いて表に出た寒い夜 エアコンのない六畳間「ぼーんぼん」柱時計の音が響いて 「たーけやー たけやさおだけ」…

「短歌の時間」題詠「草」入選歌

ちょっとまえオーストラリアの牧場で草食みし牛のハンバーグステーキ 東直子先生選

NHK短歌佳作秀歌入選歌

シグナルの変わる一瞬若き日は もう着られないたくさんの服 大辻隆弘先生選

NHK短歌入選歌

楽しそうに母は何度も話してた父とはじめて会った日のこと 大辻隆弘先生選