エッセー 昭和ノスタルジー 一「ウェスタンカーニバル」
いまは近代的なビルが建つ有楽町の一角に、かつて日劇という建物があり、ウェスタンカーニバルが開催されていた。
母と一緒にウェスタンカーニバルを見に行った記憶がある。ステージにいたのは、真家ひろみ、飯野おさみ、中谷良、あおい輝彦。元祖ジャニーズだ。
私は売店で、プロマイドを買ってほしいと、母にねだった。手にしたのは飯野おさみのプロマイド。
「あんた、この人が好きなの」と母に言われたことを覚えている。
母は、あおい輝彦を見て、「秀之に似ている」と言った。秀之というのは、母の弟、私の叔父だ。戦後間もなく、ニ十歳そこそこの若さで結核で亡くなった。
「秀之は、目がくりっとしていい男だった」と母は言った。そしてその後、ジャニーズがテレビに出る度、あおい輝彦を見て、「この人、秀之に似ているね」と言うのだった。
古いアルバムに叔父、秀之の写真があった。母の言う通り、眼がくりっとして、俳優のように整った顔立ちをしていた。
理系の勉強をしていたので兵役を免れたという。それなのに、結核に侵され、二十歳を過ぎて間もなく亡くなった薄幸の叔父だった。