三「昭和の暮らし」
昭和の畳の居間には卓袱台があって、箱型のモノクロテレビがあった。テレビの傍にはいつも、見たい番組を丸で囲った新聞の番組表があった。
明治生まれの祖母は、テレビで相撲を見るのが好きだった。ひいきの力士が勝つと、パチパチと手を叩いて喜んでいた。
家電が普及しはじめた頃で、台所にはまだ木の冷蔵庫があった。調理はガスコンロだけだった。電子レンジの代わりに大きな蒸し器があった。水を少量入れた鍋に冷やご飯を茶碗ごと入れ、蓋をして火にかけ、温めて食べた。
ガスで沸かす風呂窯の付いた風呂、木製タンクが頭上にある和式トイレがあった。
夏は扇風機で涼み、冬は火鉢やガスストーブで暖を取った。子供だった私は家事をしなかったので実感がないが、脱水機の付いた洗濯機、電気冷蔵庫、電気炊飯器など、家電が続々増えて昭和の暮らしは便利になっていったのだろう。
家には風呂もあったが、母に連れられて夕暮れ前、まだ明るい時間に銭湯へ行った。夕方には、豆腐を売る自転車がラッパを鳴らして裏通りにもやって来た。